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仙台家庭裁判所 昭和32年(家)807号 審判

国籍 アメリカ合衆国ミシガン州 住所 宮城県

申立人 (米国軍人)ポール・ダブリュー・ウィネリイ(仮名)

国籍 住所 申立人に同じ

事件本人 バーニス・アン・ローソン(仮名)

国籍 住所 申立人に同じ

右 親権者 母 ベラー・ジェーン・ウィネリー(仮名)

主文

申立人と右事件本人「バーニス・アン・ローソン」との養子縁組を許可する。

理由

申立人は主文の同旨の審判を求め、その実情として述べる処によれば、申立人は一、九五三年十月○日本国において婚姻し、一、九五五年十二月○日米国軍人として日本国に駐留し、肩書地に居住している。申立人は右婚姻と同時に妻の前夫との間に生れた女子バーニス・アン・ローソン(一、九五三年○月○日離婚し、その際親権者監護義務者を親権者母と定められた。)を引取り妻と共に養育している。そして申立人と右妻との間には、一、九五四年六月長男「マーチン」が出生し現在親子四人で楽しい日常生活を過しているが、申立人は此回右親権者母(妻)と協議の結果、同人の連れ子バーニス・アン・ローソンを、申立人の養子とすることに縁談が纒り、妻は親権者として未成年の子に代つて、申立人との養子縁組を承諾したので縁組は成立した。申立人は将来妻と共に責任を以て養子を立派に育成し、幸福の生活を営むことを念願している。尚申立人は一、九五八年九月○日帰米の予定であるが、来る十五日頃迄に東京都に行くことになつている。従てこの際各方面に手続をしたいので、養子縁組の許可を受けたいというのである。

依て当裁判所は、申立人及び法定代理人母を審問し、且記録添付の養子縁組承諾書、申立人所属部隊司令官D大尉より、当裁判所宛申立人の氏名、出生地、生年月日、国籍、婚姻干係、軍務干係、資産状態等の証明書、及び申立人の本国法であるミシガン州法中、養子縁組に関する法規を参照した結果、右未成年者は、親権者母と米国人前夫との間に一、九五〇年三月○日に出生した女児であつて、申立人妻の直系卑属である。親権者母は申立人と婚姻の際、申立人の許に連れて行つた連子である。従て本件は、所謂連子の養子縁組であつて、日本国民法第七百九十八条但書によれば、かかる場合の未成年者の養子縁組は、家産裁判所の許可を必要としないで、有効に養子縁組をなし得るが、申立人の本国法には右の如き例外的な但書規定はなく裁判所の許可を要するものである。そこで養子の福祉上審判することとした。そして養子は発育もよく、親権者母は此回申立人と未成年者との養子縁組につき、未成年者に代つて、申立人との養子縁組を承諾したので縁組は成立した。又本件養子縁組は申立人の本国法においても適法になし得ること、尚申立人は将来養子を育成する愛情と、熱意と資力を有すること、それに記録添付の各証明書、並に申立人及親権者母の陳述は、いずれも措信するに充分であり、且縁組により養子の福祉を増進することが推認し得るので、申立を相当とし、日本国民法第七百九十八条本文、法例第十九条に従い主文の通り審判する。

(家事審判官 三森武雄)

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